2014年 04月 26日
クリミアのネットアイドルに見るオタク文化の脱日本化 |
某誌に載るという話もあったけど、引用している記事のソースが許可をくれなかったのでお蔵入り・・・(´・ω・`) というわけでここで個人ブログとして公開。
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2014年3月11日、「クリミア共和国独立宣言」に伴い、ウクライナの検察官だったナタリア・ポクロンスカヤ氏は、同日付で検事総長に任命されました。それに際して記者会見が行われたのですが、その記者会見の映像が動画サイトで再生数を伸ばし、マンガ調のイラストが現れ、二次創作が二次創作を生むネットミームとなりました。
この流れを「ポクロンスカヤ氏がそのアニメ的美貌により、日本でアイドル化してる」と、ロシアのタス通信が報じたあたりから話題に火がつき、当事国のロシアの各局をはじめ、ブルームバーグやBBCといったグローバルメディアも取り上げました。多くの記事では日本人がマンガ調のイラストを大量に投稿して、ポクロンスカヤ氏をネットアイドルに祭り上げていると報じていました。
しかし、実際にその「マンガ調のイラスト」を描いたのは誰なのか、蓋を開けてみるとイラストの半分以上が外国人ユーザーによるものでした。例えばBBCの記事に載っているイラストは、Itachi_Kanadeという、ベトナムのイラストレーターで、その後に続いたイラストも、多くが中国人、後にロシア人によるものでした。つまり、このミームはオタク文化に属していながら、中身は最初から殆ど海外製だったのです。
クリミア検事総長のネットアイドル化についてロシアのメディアが本人に直接インタビューすると、ポクロンスカヤ氏は「アニメは見ていないし、私はポケモンでも何でもない。私は検事総長だ。」という旨の返事をしました。ところがその時に使った”няш-мяш”(ニャーシ・ミャーシ、「かわいい何か」の意味)という言葉が、ロシア語圏でまた新たなネットミームとなってしまいました。本人は困惑する一方ですが、彼女の9歳の娘は、母親が「アニメのヒロインになっている」ことを喜んでいるそうです。
一方、この流れに別の分析をしているのがブルームバーグの記事で、この一件は「マンガを通じたクレムリンのプロパガンダではないか」と見ています。記者会見の映像が多少人気だったとしても、そんなマイナーな話をタス通信が異常な速さで拾うのは不自然だというのです。確かにYoutubeに30万再生の動画はいくらでもあります。また、当時は二次創作画像も数えるほどしかありませんでした。しかしロシアの立場から見ると、確かにポクロンスカヤ氏のネットアイドル化は政治的に有利です。効果はともかく、親ロシア的な意見がネットに増えるからです。もしブルームバーグの記者の読みが正しく、ロシア政府がポクロンスカヤ氏のネットアイドル化を意図的に起こしたのが真実であれば、ロシア政府の担当者はサイバーカルチャーを相当熟知していると言ってよいでしょう。
ポクロンスカヤ氏のネットアイドル化を報じる記事
(タス通信・2014/03/19): http://itar-tass.com/obschestvo/1058858
(BBC・2014/03/20): http://www.bbc.com/news/blogs-news-from-elsewhere-26663168
(Bloomberg・2014/03/20): http://www.bloombergview.com/articles/2014-03-20/cartoonish-crimean-prosecutor-a-hit-in-japan
by yukihanyu
| 2014-04-26 04:32
| サイバーカルチャー