アニソン歌手やアイドル声優が海外でも人気で、パリJapan ExpoやロサンゼルスAnime Expoでコンサートをやって大盛況という話を聞きます。その現場を実際にAFA2014でも見たわけですが…(
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こうした「海外で人気になる日本の(アキバカルチャー系)芸能人」ですが、アニソン歌手やアイドル声優以外の新たな勢力が現れています。歌ってみた動画や踊ってみた動画をアップロードする「歌い手」や「踊り手」、ひっくるめて「ニコ動スター」とも呼ばれる人たちです。
例えばニコ動ユーザーやボカロファンは誰でも知っている「愛川こずえ」ですが、テレビや既存の芸能界ではほぼ無名です。ところがシンガポールでの「ニコニコ国会議」では、多くの参加者が彼女の「代表作」の
ルカルカナイトフィーバーの踊ってみたを踊っていました。これを踊れるということは、愛川こずえさんのことも知っているという意味です。
日本国内と同じく、ニコ動スターのファンはほぼすべてが10代・20代、そして10代の方が過半数かというぐらいです。こういう世代になると、影響力はネット>テレビで、ネットの中でもSNS>ポータルサイト・掲示板です。
ニコ動スターは英語で"utaite(歌い手)"や"odorite(踊り手)"として知られており、facebookなどのSNSでもファンページやまとめサイト、wikiができています。「踊ってみた」については
Super Otaku Performer (
FBページ )が不動の地位を築いています。
(Super otaku performers FB公式ページより)
個々の歌い手・踊り手についてもファンが作ったページが多数あります。twitterからの転載やニコ動での動画、時には新譜CD情報などが投稿されています。特に男性歌い手のファンベースの主体は「アジア圏の十代女子」にあることがわかります。この人たちは深夜アニメを見てボカロも聴いているようですが、秋葉原や池袋のオタクとも違い、在りし日に渋谷や原宿に集っていたJ-POPファンや「ジャニーズオタ」の雰囲気も混ざっています。
これらのページはファン個人が作っていることが多いため、タイやベトナムなどの「国ごと」のページになっています。しかしページに「いいね」を押す人の顔ぶれは、その国の人とは限らないようです。たとえばそらるさんの「最大勢力のファンページ」はベトナム語ですが、そこにインドネシアやらタイやらのファンも大勢います。
こうしてニコ動スターが海外でも人気になる中、当の歌い手・踊り手本人も一部は海外のファンを意識しはじめています。(これまでの「芸能人」と違い、最初から海外での人気を意識していた人もいるようですが・・・)
例えばハッピーシンセサイザの踊ってみたなどで有名になった
「めろちん」のFBページですが、2011年の10月から運用されています。当初は日本語が中心のアカウントだったようですが、最近は海外フレンドが激増しており、コメントも日本語以外でほぼ埋まってます。
踊り手の「みうめ」についても、海外ファンが作った
英語ファンページを本人が「公式」認証してます。ニコ動運営のドワンゴもアジア圏でのUtaite人気に気付いており、2014年のAFA2014でも、ROOT FIVEとアルスマグナをステージ出演させていました。
SNSでのファンページの規模や持続性はまちまちです。管理人は10代の一般ファンが多いようですが、10代と言えば受験や恋愛、進級などで生活パターンがしょっちゅう変わります。そのため開設者が忙しくなった・飽きた・パスワード無くした、などの様々な理由で更新停止するため、よほどのコミットメントを持った人でないと長続きせず、安定したファンページが育ちにくい状況もあるようです。その中でニコ動歌い手・踊り手をアジア圏にどうやって売り込んでいけるかは見ものです。
「日本の芸能人を海外でも売り込む」というのであれば、ニコ動スターよりも知名度があるSMAPや嵐はどうなのと言う人も多いでしょうが、地上波テレビの芸能人(TV celebrity, pop starと呼ばれる人たち)は他国にもいます。そこに食い込んでいくのはかなり難しいでしょう。
しかしニコ動スターは、ほとんどがイラスト・二次創作・コスプレと色々絡みこんで有名になってます。こんなスタイルの「芸能人」は事実上日本だけで、海外でもこれといった競争相手がいません。そのため知名度においても国内よりも海外の方が上回り、Youtubeではニコ動歌い手の動画の方が、地上波テレビの芸能人よりも外国語コメントが多かったりします。
ニコ動スターはテレビや既存メディアやレコード会社の公式サイトを見てもなかなか出てきません。さらに英語でともなれば絶望的です。その中でアジア圏のニコ動スターファンたちは、twitterなどを駆使して自分で情報を集め、翻訳してシェアしています。そして日ごろから「そらるが新譜を出す」とか「まふまふが~」、「ぐるたみんが~」と、ニコ動の有名歌い手のうわさ話や新譜情報をやり取りしています。
そんなファンたちが大挙してコミケやニコ超に来るのも時間の問題でしょう。